千葉地方裁判所 昭和51年(わ)165号 判決 1976年5月20日
本籍
千葉県船橋市習志野台六丁目一四番地の一
住居
同市習志野台六丁目一四番一号
医師
小嶋貞道
昭和七年一〇月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官子原英和出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月及び罰金六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、肩書住居地において、産婦人科及び小児科の医師として、小嶋医院の名称で医業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、診療収入の一部を除外し、これを簿外預金とするなどして所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四七年分の実際総所得金額は三、九七〇万九、八五一円で、これに対する所得税額は源泉徴収税額五六万三、三八八円を控除して一、九四七万九、四〇〇円であつたのに、昭和四八年三月一五日市川市北方一丁目一一番一〇号所在の所轄市川税務署において、税理士宮沢辰男を介し同税務署長に対し、総所得金額は一、〇二六万二、一〇一円でこれに対する所得税額は右源泉徴収税額を控除して二四六万七、六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書(昭和五一年押一〇五号の一)を提出し、もつて、不正の行為により昭和四七年分の所得税一、七〇一万一、八〇〇円を免れ、
第二 昭和四八年分の実際総所得金額は四、一四七万一、五一二円で、これに対する所得税額は源泉徴収税額七八万七、五一四円を控除して二、〇二九万七、六〇〇円であつたのに、昭和四九年三月一四日前記市川税務署において、前記宮沢を介し同税務署長に対し、総所得金額は一、六五五万一、四九七円でこれに対する所得税額は右源泉徴収税額を控除して五一六万三、六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書(同押号の二)を提出し、もつて、不正の行為により昭和四八年分の所得税一、五一三万四、〇〇〇円を免れた。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 大蔵事務官の被告人に対する質問てん末書一二通、被告人の検察官に対する供述調書三通及び被告人作成の昭和五〇年三月二六日付上申書
一 松田進(二通)、宮沢辰男の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書二通
一 大蔵事務官作成の現金調査書、当座預金調査書通知預金等調査書、定期積立金等調査書、信託等調査書、公社債投資信託等調査書、割引債券等調査書、株式等調査書、売掛金調査書、たな卸資産調査書、土地調査書、買掛金調査書、借入金調査書、預り金調査書、貸付金調査書、事業主貸調査書、ゴルフ会員券調査書
一 検察事務官作成の仮受金、事業専従者給与額、譲渡損失に関する各報告書
一 加藤冨士雄作成の上申書
一 大蔵事務官作成の青色申告承認取消に関する証明書
一 押収中の所得税確定申告書二通(昭和五一年押第一〇五号の一、二)、総勘定元帳二冊(同押号の四、五)、分娩台帳二冊(同押号の六、七)
(法令の適用)
罰条 所得税法二三八条一項
刑種の選択 懲役刑及び罰金刑の併科
併合罪の処理 刑法四五条前段、懲役刑につき四七条本文、一〇条(重い第一罪の刑に加重する。)、罰金刑につき刑法四八条二項
労役場留置 刑法一八条
刑の執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項
(裁判官 横田安弘)